第九夜「トンネル」

トンネル・橋

友人のAに誘われて、有名な心霊スポットに行くことになった。

そのトンネルでは、白い女が出ると噂されていた。

夜の10時を過ぎた頃、Aと2人で車に乗り、そのまま山道へ向かった。

トンネルは街の外れ、舗装もされていない旧道の先にある。

街灯もなく、周囲は木々に囲まれていた。

トンネルの手前に車を停め、徒歩でトンネルに近づいていく。

目の前に、古びたコンクリートのトンネルが現れる。

水が染み出し、壁には苔がこびりついている。

俺「ほんとにここ、やばいらしいぞ。中学の先輩が夜中に見たって」

A「いや、大丈夫だって!なんもでねーよw」

Aはやけに楽しそうに話していた。

俺は正直、怖かったが、Aが妙に乗り気だったので渋々ついてきた格好だ。

中からは、冷たい空気がゆるゆると漏れていた。

「行ってみようぜ」とAが言う。

俺は仕方なく頷き、2人でトンネルに入った。

壁に付いた照明の光が道路の水たまり反射している。

足音がコツコツと反響する中、10メートル、20メートルと進んでいく。

やがて、トンネルのほぼ中央まで来たとき、立ち止まった。

さすがに怖い、トンネルの中のひんやりと湿った空気が、余計に恐怖を誘う。

「なあ……やっぱ戻らね?」正直、ここに来たことを後悔していた。

Aは数歩先を歩いていたが、ぴたりと足を止めた。

「……なあ、聞いてる?」

返事がない。

Aは、前を向いたまま動かない。

「おい、やっぱちょっとさ……」一瞬振り向いて、向き直った時

その瞬間、Aがいたはずの場所には────

────女がいた。あの噂の白い女だった。

女の顔は、目と口があるはずの部分が真っ黒い穴の様になっていた。

女「#%▽×いいよね? #%▽×いいよね?」

何を言っているのかはっきりわからない。

腰が抜けて、その場に尻もちをつく。

必死に地面を這うようにして後退し、なんとか立ち上がり、出口に向かって走り出す。

背後から、声が追ってくる。

「#%▽×いいよね? #%▽×いいよね?」

鼓膜の裏側に直接語りかけてくるような声。

もうすぐ出口だ、あと数歩──!

その瞬間、一層大きな声で

「おまえのからだ、もらってもいいよねぇ!?」

トンネル全体に響き渡った。

その後の記憶が、ない。

──気がつくと、最寄りのコンビニの駐車場にいた。

スマホを取り出そうとする手が震えている。

スマホに表示されている時刻は、深夜1時過ぎ。

1人でコンビニでコーヒーを買い、気分を落ち着かせた。

結局Aが女になって……Aはどこに行った?

スマホで連絡しようとしてみるが、Aの連絡先が見当たらない。

あれ?なんで無いんだ……いや、A?

Aってだれだろう、そんな友達、ワタシにはいなかった?

 

---今夜も「旅する怪談」をお読み頂き、ありがとうございました。怪談の旅はまだまだ続きます。次の夜も、どうかお付き合いください。---

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トンネル・橋

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